あなたは行動経済学をご存じでしょうか?
簡単に説明すると、経済学の大枠の中の1つで、人の心理的要因や感情に注目して分析・検証する経済学です。
ざっくり言い換えると、心理学 × 経済学ととらえることができます。
この行動経済学に関する知識を身につけると、あなたが何かを購入することを決めたときの心理状態や、無意識のうちの行動を理解することができます。
個人レベルでは、余計な買い物をしないように冷静な判断ができるようになったり、ビジネスの場では、より効果的に商品やサービスの売上アップを図ることができます。
行動経済学の第一人者はアメリカ出身の行動経済学者ダニエル・カーネマンで、この分野の研究でノーベル賞を受賞しています。
また、行動経済学を利用したビジネスの手法は、あなたの身近なところで、ほぼ毎日あなたに影響を与えています。
それでは、あなたが自覚していないところで作用している、行動経済学の一部をご紹介します。
お金の”価値”は状況によって変わる?
あなたにとってお金の価値はどんな時も変わらないものでしょうか?
例えば次のような状況ではどうでしょう。
Case 1: ある日の友人とのショッピング

ある日あなたは友人とショッピングに行くと、少し前から気になっていた洋服が4,000円で売られています。買おうかどうか考えていると、歩いて10分ほど離れた別のお店に、同じ洋服が3,000円で売られていることを友人が教えてくれました。
あなただったら、どうしますか?
この場合、多くの人は3,000円の洋服を買うことを選択します。
では、同じ状況で、これが18万円の一眼レフカメラだったらどうでしょうか。 10分離れたお店で1000円安く売られている場合、あなたはどちらを選びますか?
この例は、どちらの選択が正しいという話ではありません。心理的な気持ちの動きを振り返ってみてください。
一般的に、3,000円と4,000円の服の例では、多くの人が10分離れたお店で1,000円安い服を買うと答えます。
しかし、18万円のカメラの例のように金額が大きくなった時には、1,000円の差は小さく感じてしまい、「そんなに変わらない」と考える割合がグッと高くなります。

このように、1,000円のお金の数字的な価値は同じであるのにも関わらず、状況によってお金の価値の”評価”は変わってしまいます。
この心理的な変化について、別の例でもう少し掘り下げてみましょう。
Case 2: 突然会社から2万円の臨時手当て

もし明日、あなたの会社でこんなことがあったらどう感じますか?
「業績アップの特別手当で2万円をあげます」
では、「5万円あげます」と事前に言われておいて、
「すみません、手違いで1人2万円でした」
と渡されるとガックリしませんか?
この例では、結果は同じで「2万円もらえる」のにも関わらず、心理的な動きが全く異なります。

このような2つの例は、行動経済学では「参照点」という言葉を用いて解説されます。
「参照点」とは基準となるポイントのことで、急に2万円を得る例の場合、元々もらう予定がなかったので、0円が参照点(基準)となります。
5万円のはずだったのに実際は2万円だった例では、5万円が参照点(基準)となります。
数字に基づいて合理的に考えると、どちらの例でも20,000円を得たことには変わりないため、同じように喜ぶのが普通ですが、この参照点が働くことで、同じ結果でも異なる心理状態になるという矛盾が生まれるわけです。
まとめ

このように、心理的要因が働いて行動心理や経済活動に影響を及ぼす要因・結果を検証する学問が”行動経済学”です。
今回は、その中でも基本的な前提である、”お金の価値の変化”を説明する、「参照点」に関してご紹介しました。
今や、多くの企業がこの行動心理を生かした宣伝やマーケティングを展開しており、あなたの身の周りのあらゆるところで、知らないうちにあなたの判断や意思決定に影響しています。
思わず買ってしまうという心理を理解し、ビジネスに生かすことで、劇的な売上アップに成功した企業も多く存在ます。
そんな企業が利用している具体的な手法に関しては、また別の記事でご紹介しましょう。
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